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つかう

効かないとき、直し方が逆を向いている。

思った答えが返らない時、人はたいてい「もっと強く言う」「もっと詳しく書く」方へ直す。仕組みの側から見ると、その多くは効かないどころか逆を向いている。言い方の話ではなく、どこに何を置くかの話。
プロンプトとは、AI に送る文章そのもののこと。ここに並ぶ8つは道具に依らない ── どのモデル・どのアプリでも同じように成り立ち、根拠は全部、外に出典がある。

直す場所

1 ── 書く順序

「よく考えてから、結論だけ」は、考える場所を消している

答えは全体を先に決めてから書かれているのではない。そこまでに出た文を見て次の1つを選ぶ、をひたすら繰り返している。だから結論を先頭に置かせると、その結論は何も参照せずに選ばれる。

答えの1文字目を選ぶとき、モデルが見られるのは?

模式四角ひとつが、書かれていく単位。上の括弧は、その1つを選ぶときに見えている範囲。

よくある直し方

この企画、よく考えてから、 結論だけ簡潔に教えて。

効かないので「もっとよく考えて」を足す。考える場所が無いことは変わらない。

仕組みに合う直し方

この企画の判断材料を、 良い点と悪い点で箇条書きに。 そのうえで最後に結論を1行。

結論を後ろに置く。読む側は最後の1行だけ読めばよく、短さは失われない。

論文途中の考えを書かせると最終的な答えが変わることの測定(2022)── arxiv.org/abs/2201.11903

講義1つずつ前から選んで生成する仕組み(Stanford CS336)── stanford-cs336/lectures

2 ── 置く位置

長い資料の真ん中は、落ちる

長い入力では、置いた位置で拾われやすさが変わる。先頭と末尾に置いた情報は拾われやすく、真ん中に置いた情報は落ちやすい。長い文脈を売りにしたモデルでも、同じ傾向が出る。

長い資料の中で、いちばん拾われにくいのはどこ?

模式縦軸に数値は置かない ── 形が結論で、どれだけ落ちるかはモデルと長さで変わる。

よくある直し方

[長い資料] ※ここ重要:日付は西暦で [資料の続き]

拾われないので「※※重要※※」と目立たせる。位置は変わっていない。

仕組みに合う直し方

[長い資料] 上の資料から日付を拾って 一覧にして。西暦で書くこと。

指示は資料の後ろ。長い資料を貼るときは、先頭にも一度置いて挟むとさらに固い。

論文長い文脈で、置いた位置と拾われやすさを測定(2023)── arxiv.org/abs/2307.03172

3 ── 聞き方(寄り)

「これで合ってる?」は、確認になっていない

人の好みで調整する工程が入っているため、利用者の意見に合う答えのほうへ寄る性質がある。複数の主要モデルで測定されている。自分の案を見せた時点で、返ってくる答えは動いている。

「A案で行こうと思う。合ってる?」と聞いたとき、返る答えは?

模式寄る向きが結論。どれだけ寄るかはモデルと話題で変わる。

よくある直し方

A案で行こうと思うんだけど、 これで合ってる? (賛成が返る) →「本当に?厳しく見て」

追撃しても、今度は否定の方へ寄るだけ。押した方向に動くという性質は同じ。

仕組みに合う直し方

A案とB案がある。 それぞれの弱点を3つずつ挙げて。

自分がどちらを推しているかを出さない。両方に同じ仕事をさせると、寄りが効く先が消える。

論文利用者の意見へ寄る傾向を、複数の主要モデルで測定(2023)── arxiv.org/abs/2310.13548

4 ── 聞き方(空欄)

知らないときも、同じ顔で返ってくる

黙るより答えるほうが点になるように、訓練と評価の仕組みが働いている。知らないことを聞かれても空欄で返らないのはそのため。口調の自信は、確からしさの信号ではない。

モデルが知らない事柄を聞かれたとき、いちばん多い返り方は?

模式差は中にある。外から見た形が同じなので、読む側では選り分けられない。

よくある直し方

〇〇社の返品規定を教えて。 (自信のある文体で返る) →「分からなければそう言ってね」

断りの一文が増えるだけで、埋めに行く性質は変わらない

仕組みに合う直し方

〇〇社の返品規定を、項目ごとに 出典URLを付けて。 URLを出せない項目は 「出典なし」と書いて。

URLは自分で開く。確かめられる形にすることが目的で、宣言してもらうことではない。

論文訓練と評価の仕組みが「答えてしまう」方向に働くことの分析(2025)── arxiv.org/abs/2509.04664

5 ── 判定の仕方

1回で、プロンプトの良し悪しは決まらない

次の1つは確率から選ばれるので、同じ入力でも出力は揺れる。1回うまくいったことは、そのプロンプトが良い証拠にならない ── そして1回失敗したことも、その頼み方が駄目な証拠にならない。

まったく同じプロンプトを2回送ると?

模式割れ方は毎回変わる。割れること自体が結論で、割合はモデル・設定・問いで違う。

よくある直し方

1回試す → 良かった → 採用 → 悪かった → 書き足す

効かない修正が効いたことになって残る。プロンプトが長くなる原因の多くがこれ。

仕組みに合う直し方

同じものを3回、別々に送る → 3回とも同じ形で返るか見る → 直したら、また3回

見るのは形が安定しているか。同じ文章が返るかではない。

講義次の1つを確率から選ぶ仕組み(Stanford CS336)── stanford-cs336/lectures

論文書かせ方の違いで最終的な答えが変わることの測定(2022)── arxiv.org/abs/2201.11903

6 ── 渡すもの

マイナーな対象は、深掘りするほど崩れる

学習データに多く出てきた事柄ほど正確で、めったに出てこない事柄ほど誤りやすい。この関係は「その話題が学習データに何件あったか」と「正答率」を並べて量として測定されている。そして学習データには締め切りがある。

あまり知られていない製品について、さらに詳しく聞くと?

模式右上がりの向きが測定されているもの。曲線の形と位置は説明のための当てはめ。

よくある直し方

〇〇という製品の仕様を、 もっと詳しく。 (それらしい数値が返る)

返ってきたものが正しいかは、その分野をすでに知っている人にしか見分けられない

仕組みに合う直し方

[仕様ページを貼る] この資料の範囲だけで答えて。 書かれていないことは 「資料に無い」と書いて。

知っているかに賭けない。範囲を切ると、埋めに行く余地も同時に狭まる。

論文学習データ中の件数と正答率の関係の測定(2023)── proceedings.mlr.press / Kandpal et al.

公式「学習データの締め切り」と「知識が確実な締め切り」を別々に公表している例 ── platform.claude.com / Models overview

7 ── 形の与え方

説明を足すより、完成形を1つ見せる

素の言語モデルは「続きを書く」だけの機械で、指示に従う・断る・丁寧に話すは、あとから別の工程で足された性質。だから完成形を1つ置くと、下の層に直接効く ── 続きを書けばいいだけの形になる。

出力の形を揃えたい。より効くのは?

模式指示は上の層への頼みごと、例は下の層がそのまま続けられる形

よくある直し方

見出しを付けて、次に箇条書きで 3点、各項目は40字程度、 文末は体言止め、最後に一言 まとめ、絵文字は使わないで…

条件が増えるほどどれかが落ちる。落ちるたびに条件を足すことになる。

仕組みに合う直し方

この形で書いて。 [完成した例をそのまま1つ貼る] 題材はこちら:〇〇

40字も体言止めも、例の中に既に入っている。言葉にしなくていい条件が消える。

論文指示に従う性質を、後から別の工程で付けていることの報告(2022)── arxiv.org/abs/2203.02155

8 ── 長さの指定

文字を、数えていない

モデルは文字でも単語でもなく、学習のときに決めた区切り(トークン)で文章を読む。「300文字以内」が守られないのは、言うことを聞いていないからではなく、その単位で見ていないから。強く言っても直らない。

「300文字以内で」が守られない。効く手は?

模式区切りの位置は描いていない ── 実際の分け方はモデルごとに違う。棒の長さの差だけが測定されているもの。

よくある直し方

必ず300文字以内で! 絶対に超えないこと!!

強めた分だけ他の指示が薄まる。長さは相変わらずずれる。

仕組みに合う直し方

だいたい300文字で。 長くなったら削って。

厳密に要るなら数えるのは外の仕事。文字数制限のある欄に貼るなら、貼る前に自分で数える。

講義トークンという単位に切って読む仕組み(Stanford CS336)── stanford-cs336/lectures

論文同じ内容でも言語によってトークン数が変わることの測定(2023)── arxiv.org/abs/2305.15425

載せなかったもの

通す関門は、三つ。

検索すると出てくる「プロンプトのコツ」の多くは、ここに並んでいない。落ちた理由のほうが、残ったものより多くを説明する。

関門問いこれで落ちるもの
知らないと、直し方が逆になる「具体的に書く」「例を出す」── 知らなくても損しない
道具・年・モデルが変わっても成り立つか(構造に由来し、外に出典がある)「あなたはプロの〇〇です」「深呼吸して」「丁寧に頼む」「否定形を避ける」── 出典が意見か、世代で覆っている
読ませずに見せられる正しくても、文章でしか置けないもの
  • ②で落ちたものは「効かない」という意味ではない。効くかどうかがモデルの世代で変わり、確かめる先が無い、という意味。試すのは自由で、その時は5の「3回振る」を先に
  • ここに上限や料金の値は書いていない。道具ごとに変わり、すぐ古びるので、使っている道具の公式ページで見るほうが確実。この8つは、値が変わっても成り立つ側だけを集めてある。
  • 8つに共通しているのは、どれも言い方ではなく置き方だということ ── 何をどの順で、どこに、どれだけ渡すか。強く言う余地はどこにも無い。