U&U AI

しる

一つの箱に見えて、中は五つに分かれている。

思った答えが返らない。さっき言ったのに覚えていない。頼んでいないことを勝手にやる。困り方は違うのに、直そうとする場所はたいてい同じ「もっと上手く頼む」に寄る。仕組みの側は五つに分かれていて、どこの話かで直せる場所が変わる。
ここは道具の側の話。次のプロンプトだけが道具に依らない性質を扱っていて、残りは道具の作りの話 ── できることも名前も、製品ごとに違う。

地図

どこで、何が起きているか

頼んでから返ってくるまでに通る場所。押すと、この先の5枚がそれぞれどこの話なのかが出る。

⚠️ 五つのうち、モデルは一つでしかない。「AI が◯◯できる」と言われているものの多くは、モデルではなくその外側の話をしている ── 同じモデルでも、殻が違えばできることが変わる。逆に、言葉の選び方で直るのはモデルの側だけで、口と規則は言葉では動かない。

五つの部品

一つずつ、何をしているのか。

地図の五つを、通る順に。どれも提供元のドキュメントか、測定のある論文が言っている側だけ。この先の5枚は、全部この上に乗っている。

  • ── 頼む相手と、手を動かす部分は別のもの

    モデルがしているのは、渡された文章を読んで続きを書くことだけ。ファイルを読むのも、コマンドを走らせるのも、外のサービスを叩くのも、その外側にある道具の仕事。だから「AI にできること」を比べているつもりで、実際には殻を比べていることが多い。

    公式「コードを読み、ファイルを編集し、コマンドを走らせる道具」と定義されている ── code.claude.com / Overview

  • ── 一度に見えている範囲が、全部

    モデルは覚えていない。毎回、窓に入っているものだけを見て答えている。会話はそのつど、まっさらな窓から始まると公式に書いてある ── そしてあなたが打つ前に、もう大半が埋まっている(システムの指示、指示のファイル、メモ、スキルの名前、道具の名前)。枠には上限があり、超えた分は「読み落とし」ではなく、届いていない。

    公式「セッションはそれぞれ、新しい文脈の窓から始まる」── code.claude.com / How Claude remembers your project

    公式起動時に何が載るかを1件ずつ並べた解説 ── code.claude.com / Explore the context window

  • モデル ── 次の1つを、選び続けている

    全体を先に決めてから書いているのではない。文章はトークンという単位に切られていて、そこまでに出た分を見て次の1つを選ぶ、を繰り返す。だから同じ入力でも揺れるし、学習データに多く出てきた事柄ほど正確で、締め切りより後のことは入っていない。指示に従う・断る・丁寧に話すも、素の性質ではなく、あとから別の工程で足されたもの。

    講義トークンに切って読む仕組み(Stanford CS336)── stanford-cs336/lectures

    論文指示に従う性質を後の工程で付けたことの報告(2022)── arxiv.org/abs/2203.02155

  • 規則 ── 言葉づかいでは、閉じない

    窓に書いた「〜しないで」は、読まれて解釈されるもので、強制ではない ── 公式が「文脈であって、強制される設定ではない」と明記している。強制になるのは、モデルの判断の外に置いた層だけ(許可の設定と、決まった瞬間に必ず走る仕掛け)。そちらに置いた禁止は許可より先に評価され、AI からはその道具が見えなくなる。

    公式「どちらも文脈として扱われる。強制される設定ではない」── code.claude.com / How Claude remembers your project

    公式禁止の規則はどの範囲から書いても許可より先に効く ── code.claude.com / Configure permissions

  • ── 渡した数と種類で、できることが決まる

    ファイルを読む・書く、コマンドを走らせる、ウェブを見る、外のサービスに繋ぐ。口を1つも渡していなければ、起きることは何も無い ── 危険の大きさはモデルの賢さではなく、ここで決まる。そして繋いだ口は、使わなかった日も名前が窓に載る。足すか足さないかは、能力の話であると同時に窓の話でもある。

    公式繋いだ口は道具名が起動時に載り、詳しい仕様は要る時に読む ── code.claude.com / Connect Claude Code to tools via MCP

このサイトの言い方と、外での言い方

ここまで全部、日本語の言い換えで書いてある ── 窓・殻・口・紙・分身。読みやすい代わりに、そのままでは検索できない。外の記事も公式のドキュメントも、下の右側の語で書かれている。

⚠️ 載せる条件は一つだけ ── このサイトのどこかが実際に扱っている概念であること。「一般に重要そうな語」は入っていない。語彙を全部集めた表は、一度作って畳んでいる(多いと読まれず、その都度調べるほうが速い)。ここに無い語で詰まったら、公式の用語集のほうが速い。

① 殻 ── 道具の側

  • agentic harnessエージェント

    モデルを「働ける存在」に変える外側。ファイル操作・コマンド実行・許可の壁・窓の組み立てを持つ。Claude Code も Cursor も ChatGPT のアプリも、これ。

  • 調べる→やる→確かめるagentic loop

    殻が回している輪。道具の結果が次の判断の材料になる。「エージェント」と呼ばれているものの中身がこれ。

  • 一往復turnターン

    送ってから返し終わるまで。間に何回道具を使っても1ターンと数える。

  • 会話sessionセッション

    一続きの会話。窓を1つ持つ。新しくすると窓が空になり、前のは残っていて呼び戻せる。

② 窓 ── 何が載っているか

  • context windowコンテキストウィンドウ

    一度に見えている範囲。→ コンテキスト

  • 打つ前から載っている指示system promptシステムプロンプト

    提供元が書いて先頭に置いてある指示。利用者からは見えないことが多い。

  • 指示のファイルCLAUDE.md

    決まりを書いておいて毎回読ませるファイル。ファイル名そのものが語になっているので、これで検索すると書き方の話がまとめて出る。→ コンテキスト

  • AI が書き足すメモmemoryメモリ

    こちらが書くのではなく、AI 自身が残していく覚え書き。指示のファイルとは別物。

  • 畳まれるcompaction自動要約

    窓が一杯になった時、会話が要約に置き換わること。「さっき言ったのに」の正体。コンテキスト

  • 分身subagentサブエージェント

    別の窓を持たせて調べものを任せる相手。読んだ量はあちらに溜まり、戻るのは結論だけ。コンテキスト

③ モデル ── 中身

  • 模型LLM大規模言語モデル

    続きを書く機械そのもの。殻の中に一つ入っていて、差し替えられる。

  • 切られる単位tokenトークン

    読む長さも料金も、この数で数える。日本語は同じ内容でも数が増える。プロンプト

  • 学習の締め切りknowledge cutoff知識カットオフ

    その日より後の出来事は入っていない。2種類あって、確実な範囲のほうが早い。プロンプト

  • 内で下書きしてから答えるextended thinking推論モード

    答える前に、見えない場所へ先に書く仕組み。次の1つを選び続けているのは同じで、書く場所が変わっただけ。

  • 揺れの強さtemperature温度

    次の1つをどれだけ散らして選ぶかの設定。アプリでは触れないことが多いが、同じ入力で出力が毎回変わる理由はこれ。プロンプト

④ 規則 ── 強制になる層

  • 許可の設定permissions権限

    どの道具をどこまで使わせるかの表。禁止は許可より先に効く。実行

  • 必ず走る仕掛けhookフック

    決まった瞬間に自動で走る処理。お願いではなく、発火が保証されている側。実行

  • 囲いsandboxサンドボックス

    走る前に触れる範囲を絞っておく形。提供元自身が「完全な隔離ではない」と書いている。実行

  • 巻き戻しcheckpointチェックポイント

    直前の状態へ戻す仕組み。戻るのはファイル編集だけで、送信や公開は戻らない。→ 実行

⑤ 口 ── 足すもの、入ってくるもの

  • toolツール

    AI が取れる行動そのもの。読む・書く・走らせる・見る・繋ぐ。→ 索引

  • 繋ぐ口MCPModel Context Protocol

    外のサービスに繋ぐための共通の規格。繋ぐと道具の名前が毎回窓に載る。拡張

  • skillスキル

    やり方を書いておいて、要る時だけ読ませる手順書。繋ぐ口とは役が違う ── こちらは知識、あちらは呼び出し。→ 拡張

  • 打って呼ぶものslash commandスラッシュコマンド

    / で始まる短い呼び出し。設定や制御そのものは、これでしか届かない。索引

  • pluginプラグイン

    上のいくつかをまとめて配れるようにした包み。中身は空のこともある。→ 索引

  • 外から来た文章が指示として効くprompt injectionプロンプトインジェクション

    読ませたウェブページや道具の説明文に書かれた命令が、あなたの指示と同じ平面に並ぶこと。どちらが本物かを示す印は付いていない。実行

  • 三つ揃うと道ができるlethal trifecta致死の三点セット

    私的なデータ・外から来る文章・外へ出せる口。この三つが同時に揃った時だけ、持ち出される道ができる。実行

ここから

五つの部品を、一つずつ

この先の5枚は、上の地図のどこか1つを深く見る。この順に並べてあるのは、前の枚が次の枚の前提になっているから。どこから読んでも構わないが、順に読むと二度説明されない。

  1. 01

    プロンプト窓とモデルの間

    効かない時、人は「もっと強く言う」「もっと詳しく書く」方へ直す。仕組みの側から見ると、その多くが逆を向いている ── 8つ。5枚のうちここだけが道具に依らない。

  2. 02

    コンテキスト

    毎回まっさらな窓に、何が載って何が消えるか ── 4つ。置き場所で寿命が変わり、長い指示書ほど守られにくい。

  3. 03

    索引

    いま何が在るかを、やりたいことの言葉で引く。ここだけ読み物ではなく、道具。

  4. 04

    拡張口を足す

    足せる形は4つあって、できることではなく窓の食い方で分かれている ── 3つ。繋ぐ前に問うことがある。

  5. 05

    実行規則と口

    手を動かさせ始めた時に、何が入れ替わるか ── 4つ。「気をつける」では守れない理由がここにある。

プロンプト ── 直し方が逆になるところ

五つのうち、まずモデルの側から。言葉の選び方で直るのはここだけで、口と規則は言葉では動かない。